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物理と数学の不思議な関係 物理数学の入門書

物理と数学の不思議な関係 マルコム・E・ラインズ 青木薫[訳] 早川書房  amazon.co.jp

文庫本サイズで、分厚い。約500ページある。パズル好きな人、数学が得意と思っている人、物理現象に興味がある人、高校で理数系の大学を目指している人、理工系大学の1,2年生の人に有益な本と思われる。夏休みに読む本にはいいかもしれない。

本書は分厚いが、著者が秀才のためか難しい事も平易に語りかけるように解説しているので楽しめた。理工系の本で、このような本を書ける日本人を私は知らない。
大学で使う数式も結構出てくるが、その部分がわからず読み飛ばしても、著者の主張している部分は平易な言葉で言っているので、アウトラインは理解できるはずだ。全く理解できないとは思わないだろう。無論、数式が理解できていればより理解が深まるのだが、本書の中で使っている数式をほとんど理解できている人ならこのような本をあえて買う事はないと思う。仮に買うとするなら、単なるエンターテイメント本として買うのだろう。

要するにこの本は物理数学の一番初歩の入門書なのだ。ほとんど役に立つとは思えないような、とんちやパズルでしか使わないと思われていた数学が、実は物理現象の中に広く体現していたというおもしろい話を披露している本だ。あらゆる分野の数学や物理を広く浅く紹介し、各分野を歴史的経緯から説明しているので一種の数学史、物理学史とも見なせる。

私は理数系の学問の本、特に数学の解説書で、いきなり数式が出てきて式の証明が最後に来て終わりというスタイルに強い拒否反応を示すから、このような本は本当にありがたかった。なぜなら、どういう経緯でそのような数式が出てきたか一般的な解説書では全くわからなかったからだ。必要だからこそ難しい方程式が生まれたのであり、経緯を説明するべきなのだ。そうすれば、理解の助けにもなる。数学、物理学の解説書はまず、歴史的経緯を最初に詳しく説明するべきだと私は思っている。

本書はあらゆる分野、それも最先端の分野も扱っていて、読者が興味のある部分と無い部分が各章によって出てくると思う。しかし、今の時代、物理と数学はあらゆる分野で出てくる方程式が縦横無尽に使われているので、興味のない部分も学習せざるを得ない状況になると思う。割り算が、かけ算と引き算、そしてかけ算は足し算のやり方を知っていなければできないように。

各章が説明している物理数学

一章 本書の概略
二章 空間充填問題とそれに関わる結晶学、ガラスの構造
三章 ユークリッド幾何学、リーマン幾何学。リーマン幾何学を利用した相対性理論
四章 フーリエ級数とそれを利用した固体結晶学、量子力学
五章 いろいろな「数」について。整数、実数、四元数、虚数、複素数、ベクトル、テンソル
六章 ペンローズタイル、フィボナッチ数列と、ペンローズタイルが体現している固体の準結晶状態

七章 ニュートン力学、カオス、フラクタル。原子量子レベルのカオス

(脱線するが、カオスを研究している中である規則性を発見し、自分の名前がつけられたファイゲンバウム数(4.669201609..)の発見者、ファイゲンバウムの写真がP.245にあるが、魔術師のようだ(笑)。セロとか「うぃっしゅ」と言わない方のダイゴのアトラクションショーのポスター写真に使われるような写真。)

八章 群論の創始者ガロアからリー群、リー群を利用した物質(分子、原子、素粒子)の解析
九章 確率論、統計力学、マクスウェル-ボルツマン統計

十章 位相幾何学(トポロジー)、オイラーの公式、四色問題、ボロノイ多面体、トポロジーに関連した高分子化学

十一章 微分できない曲線、ペアノ曲線、コッホ曲線、フラクタル、マンデルブロー、物理現象でも現れるフラクタル、ランダムウォーク(酔歩運動)、パーコレーション(浸透現象)

十二章 ライプニッツの時代からからシュレーディンガーまでの運動方程式についての考察。波動関数、不確定性原理