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石川知裕「雑巾がけ」小沢一郎という試練

石川知裕「雑巾がけ」 amazon.co.jp

自称小沢スーパーチルドレンが語る、小沢一郎に憧れ、怒鳴られ、翻弄されて成長していったお話。

ロシアのサイトから流出した、彼石川議員と田代検事との任意聴取の内容か面白く、石川議員に興味を持ったため購入した。この任意聴取は雑誌で一部紹介されているようだが、形式的なことはそっちのけで本音で語っている部分が多く、この本も師匠である小沢一郎に対して遠慮せずに本音を語っている。

..とは言っても、小沢一郎を全否定するような発言ではなく、当時の自分の気持ちを正直に吐露し、後で自分が至らなかったと反省し回想しているのである。(明らかに師匠が悪いと述べている部分もあるが)
この本に書かれているが、彼は書生からスタートしたが実際にやっていたことは家政婦で、その後秘書になったが、実際にやっていたことは主にお抱え運転手だった。
ほとんど丁稚奉公と同じで、政治に関わる仕事はほとんど何もしていなかった。

もっとも政治家になるためのステップとしてそのような奉公人になるのは大きなプラスになっている。…というのは、要は選挙で選ばれるには有権者のいろいろな要求に応えなくてはならないため、有権者に好印象を持たれるために、細々とした所作や儀礼を身に付けているというのは知っていて損ではないからだ。特に若者は何も知らず、マナー違反に当たる行為を結果的にやってしまうので、そのような準備期間が必要だというのは、今となっては石川議員も小沢一郎と同じ見解だろう。

しかし、身内に対しては師匠である小沢一郎は非常にぶっきらぼうな態度をとり続け、秘書が彼の意向を常に汲み取らなければならなかった。口数も少なく、何も言わずに不機嫌な態度を取ることもある。最初石川議員は教育のためと思っていたようだが、違っていたと述べている。典型的な昔の父親そのもののようだ。

この本を読んで思ったのは、政治家は究極のブローカーまたは営業マンで、自分という商品を宣伝するためにあらゆるツテやコネを辿り頭を下げ、政治資金をお願いし、その引き替えに有権者のあらゆる(時には汚い)要求にも出来るだけ応えようと日々活動しているのだ。はっきり言って泥臭い。政策はこの本を読めばわかるが二の次だ。そのようなことを考える暇がないと言った方が良いだろう。政策は大所から俯瞰して決定しているのではなく、有権者のあらゆる要求を自分が当選するよう恩を売る形で決定しているのが現状だ。だからできあがる法律はいつも玉虫色のものになってしまう。

一方、小沢、石川議員らと多分対極に位置する松下政経塾(この本で石川議員がほんの少しだが批判的に書いている)などの実質的政治家予備校もしくは私塾出身の政治家(今風の政治家のようだが)は、どちらかと言えば丁稚奉公のようなことは抜きにして政策をまず考える。
(松下政経塾も修練とか修身のようなことをしているようだが。また原口議員の話によれば社会勉強の一環として実際にバイトに駆り出されることもあるようだ。)
でもそれは学者の考えた机上の空論ばかりで、端的言えば内外の学者や有力者の受け売りをそのまま政策にしている感じを受ける。だから松下政経塾出身の野田総理は高級官僚に翻弄されてしまったのだろう。悪く言えば頭が空っぽで自らの力で考えていないのだ。

どちらも良いとは思えないのだが、要は政治家そのものの存在がどうしても社会に対して地に足か着かず浮いてしまっているのが最大の問題のように思える。これは政治家になるためだけに多大な時間と労力を要しなければならないのが原因だろう。

今の大半の政治家は有力議員も含めてこれまで政治だけの世界にいた人ばかりで、実際の社会経験がない人がかなりの割合を占めている様に見える。官僚上がりの政治家もいるが、官僚も極めて特殊な世界で、いわば上流階級の人達だ。このような人達が現在割合を増やしている貧困層の事を考えることは非常に難しいと思える。企業経営者(麻生太郎のような世襲の二世三世経営者は除く)とかその他実社会の現場で長年働いていた人が多く政治家になったら、少しはまだマシな状況になっているのではないかと感じるのだが。

小沢一郎議員も基本的に政治一筋だが、彼の師匠である田中角栄は建設会社経営をしていた叩き上げの実業家だったからある程度バランスの取れた物の見方が出来るのかもしれない。

石川議員の「奉公」時代は、一般社会の社会経験を疑似体験でもいいから経験するために必要なことだと小沢氏は考えているのかもしれない。

(とはいえ、流出した供述調書では石川議員は小沢氏が外国人参政権を進めていることを述べており、個人的にはいただけない。これは彼の選挙で勝つ手法である、有力者の支持を得て得票数を伸ばす手法の問題点だ。
仮に一大勢力を握っているグループの長が反国家的な傾向持っていても、当選のためなら彼らの意向を汲まざるを得なくなる。これは小沢氏の選挙手法でもあるが、伝統的な政治家の選挙当選のための手法だ。本書ではこれを地上戦と呼び、インターネットやテレビ出演、CMで広く支持を集める手法は空中戦と言っている。
野田政権や菅政権の閣僚や新自由主義者の自民党員は、どちらかと言えば後者の手法に重きを置いているだろう。後者の問題は有権者が簡単に洗脳されてしまう問題をはらんでいる(候補者本人も洗脳されやすい人が多いようだが)。もっとも小沢氏も最近ではネットに頻繁に出てくるようになったが、既存の大手メディアからではない。単に自分の主張が広く偽り無く国民へ配信するためにネットを利用しているだけだ。)