1石増幅回路の種類

エミッタ共通回路、ソース共通回路(ベース接地回路、ソース接地回路)

一番よく使われる回路。ベース(FETならゲート)に信号を入力して、出力はコレクタ(ドレイン)になる。エミッタ(ソース)はGND(グランドと読む。アース)側につなげる。
電圧増幅率が高く、入出力インピーダンス(交流電流の抵抗分を含めた全体的な抵抗)も一般的に高い。
しかし、周波数が高くなると増幅率がすぐに下がる。(周波数特性がよくない)
しかし、最近のトランジスタ(FET)はそうでもない。
トランジスタのデータシートで帰還容量(トランジスタ内部でコンデンサと同じ機能ができてしまい、コレクタ側の信号がベースに帰還する性質を表した量。ミラー効果と言う)が少ないものほど高周波特性に優れている。


エミッタ共通回路の例

コレクタ共通回路、(エミッタフォロワ、ソースフォロワ)

主に電力増幅回路として使われる。入力はエミッタ共通回路と同じくベース(ゲート)だが、出力はエミッタ(ソース)になる。コレクタ(ドレイン)は直接電源につなげる。
電圧増幅率はほぼ1だが、電流は増幅される。そのために電力増幅に使われる(電力=電圧×電流なので)。
オーディオアンプや無線機の送信部分の最終出力段によく見られる。オーディオ用アンプではNPNとPNPのペア(NチャンネルとPチャンネルのペア)でプッシュプルエミッタフォロワ(プッシュプルソースフォロワ)を組んで使われている例が多い。これは信号の+側はNPN型のTrが増幅し、−側はPNP型のTrが増幅するやり方で1石で全ての信号を増幅するよりも効率が良い。(具体的にはトランジスタが熱くならないと言うこと。詳しくはA級 B級 C級 D級増幅についてを参照)
入力インピーダンスは高いが、出力インピーダンスが非常に低い。そのため、インピーダンス変換としても使用できる。

周波数特性は非常に優れていて、低い周波数から高周波まで特性が同じである。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベース共通回路、ゲート共通回路(ベース接地回路、ゲート接地回路)と、カスコード接続



高周波増幅回路で見られる回路である。入力はエミッタ(ソース)になり、ベース(ゲート)は交流的に接地されるか、そのまま接地されることもある。出力はコレクタ(ドレイン)となる。

周波数特性は非常に良いのだが、入力インピーダンスが低く、設計しづらい(設計の自由度が少ない)。電圧増幅もエミッタ共通回路と同等の様に言われているが、実際はそうでもない。(入力インピーダンスが低いのでマッチングがほとんど合っていない場合があるからなのかもしれない)
この回路は単体ではあまり見られず、この回路を応用したカスコード接続回路が1パッケージのトランジスタ内に組み込まれているものが多くなっている。2SK241は三本足のFETであるが、内部でカスコード接続されている。デュアルゲートMOS FET(4本足のFET)も内部でカスコード接続を形成している。
 カスコード接続とは、通常2つのトランジスタを使用し、入力がエミッタ共通回路(ソース共通回路)になっていて、出力側のコレクタ(ドレイン)にベース共通回路(ゲート共通回路)の入力が接続されている回路である。
入力インピーダンスが高くなるので設計の自由度が高くなり、かつ周波数特性も良い。


共通回路という名称について

雑誌「トランジスタ技術」などでは最近エミッタ接地回路をエミッタ共通回路という名称に変えています。個人的には違和感を覚えるのですが、電子回路では必ずエミッタ接地回路は接地(GND,アースに接続)しているとは限らないので共通という名称になったそうです。
例えば、オペアンプ(増幅率の高いアナログIC)では電源は例えば+15Vと-15Vなどの2電源が必要で、IC内部のトランジスタは必ずしもGNDにつながっていません。
それに電子回路ではほとんどの場合GND(アース)は0Vという仮定で設計していますが、別に0ボルト、つまり接地をしていなくても、定格範囲内の「電位差」があればトランジスタは動作しますので(やったことはないが仮に電源電圧側が数百ボルトで接地側が電源電圧側の電圧より数ボルト程度低い値ならトランジスタは破壊されずに動作するはず)、接地と言う言葉を共通にしたと言うのも理屈ではわかるのだが、どうもしっくりこない。
エミッタフォロワもコレクタ共通回路(昔で言うコレクタ接地回路)とも言われますが、これは電源電圧を共通の電圧源としてみるなら理屈は通りますし、昔のコレクタ接地回路という名称だと、コレクタをアース(GND)に接続していないじゃないかと言う突っ込みが入ります。
(交流的にはコンデンサを通じて接地されているという理屈はあります。ほとんどの電子回路は電源電圧とGNDの間にノイズを取り除くためのコンデンサを接続しています。このコンデンサをバイパスコンデンサ、略してパスコンとも言われています。CPUやビデオカードのチップの周りにも円筒形のコンデンサをよく見かけると思いますが、あれは多分パスコンでしょう。)

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