NFB(負帰還増幅回路)

この回路は、出力の一部を入力の一部にして、安定性とノイズ低減などを確保する回路です。
私としてはNFBは波形歪みの低減と安定性確保のために使っています(全部ディスクリートで組むと、いろんなところにトラブルが起きるものなので)。
NFBは至るところで利用され、例えばオペアンプICはNFBを前提とした設計となっています。

NFBの原理は鈴木雅臣氏の本を読むと、説明が私としては難しく、一番理解できたのが、「なっとくする電子回路」 (講談社刊。名前は間違っているかもしれない。何せ立ち読みだったので)での説明でした。
要するに、出力側を最初の増幅用トランジスタのエミッタに注入することは、ベース共通回路と同じであり、ベース共通回路は入力と出力が同位相なので、ベースから入ってくる入力信号はエミッタ共通回路で出力側は位相が反転するので、負帰還となるということです。
(入力も出力側も同じ位相なら、正帰還となり発振します。)

ですから、出力の位相が入力側の位相と反転していれば、それはNFBになるので、出力側が180度反転しているなら、最初のトランジスタのベースに入れればよいことになります。

このNFBの利得は裸利得(NFBを取り払った時の利得)が十分大きいものなら、十分理論値に近いものになります。NFBは裸利得で得られる利得を多少削って、安定性とノイズ低減、広い周波数帯域での一定した利得を獲得する回路といえます。ですから、裸利得はNFBの利得より十分大きい必要があります。
NFBの理論上の利得は (RF+RS)/RSとなります。これは近似値で裸利得が十分に高いと仮定した場合の式ですが、設計していく上では利得の計算が前もってわかるので便利だと思います。

NFBの種類は結構たくさんあり、ここでは並直列帰還増幅のみを解説しています。ちなみに1石増幅回路の設計で紹介した電流帰還バイアス回路は直列直列帰還または電流電圧帰還で1石ですがNFB回路でもあります。

NFBは図の回路でもベース共通回路でないにも関わらずかつ低周波用トランジスタで10MHzでも難なく増幅できてしまうし、ノイズもの低減も可能と、いいことずくめの様に思えますが、これは入力波形が一定している時のみに言えることだと私としては思っています。負帰還で元に戻した波形とそのときに足しあわされる入力側の波形が位相が180度違っていることを除いて同じでなければ出力波形は元の波形と違ってしまうからです。しかも出力側の位相が入力側の位相とぴったり180度だけずれているわけではありません。トランジスタは高周波になるほど(エミッタ共通回路で)増幅した出力側の位相が入力側と比べて180度からずれていきます。
しかし、光の速さに近い速さで負帰還をかけているので、元の波形をあまり損なわずに済んでいるのでしょう。厳密には元の波形に手を加えているといえます。出力側の位相が完全に180度でない問題は、多くのトランジスタを介して負帰還をかけるときに位相が入力側と同じになって発振する恐れがあります。


オンキョーのオーディオアンプではNFBをかけていない(もしくは帰還率の少ない)アンプをセールストークにしています。スピーカーから起電力が発生しているので、それが負帰還ループに入って音が悪くなるからNFBをなくしたそうです。NFBのないオーディオアンプはトランジスタの真の実力がわかってしまいます。逆にNFBをかけることは原音(元の波形)に若干に手を加えてノイズや歪みを低減すると言う化粧を施すような回路ともいえます。しかし、NFBが持つ安定性と利得を前もって知ることのできる特徴は設計をやりやすくする大きな長所です。
歪み率が低減されるのも大きな長所です。特にトランジスタは増幅率は高いのですがすぐに波形が歪んでしまうのです。その点FETは増幅率は低いですが歪みは少ないです。私が作った短波ラジオでも中間周波増幅段にNFBを使っていますが、これは歪みがすくなく安定した大きな利得を得るためにそうしたのです。単純にエミッタ共通回路だけを直列に組み合わせた増幅段だと、実装技術にもよりますが、すぐに波形は歪むし、発振しやすくなります。現に発振してしまってかなり苦労しました。



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