8石短波ラジオの製作(AF部はLM386使用)
このラジオは筆者が一からラジオを設計、製作することを目標にしました。雑誌や本の記事にある回路図に従って製作しては真の実力がつかないと思ったからです。しかし、回路の各部分は本や雑誌にある回路を参考にしてあります。
これまでの経緯
トランジスタ技術の記事にあった3石のスーパーヘテロダイン形式のAMラジオを製作
(「ラジオ&ワイヤレス回路の設計・製作」(鈴木憲次著)
に同じものが収録されている)
-> 鳴りはしたが、すぐに発振する。Qを下げる抵抗をつけても同じ
->多分中間周波増幅器で2SC1815を使ったのが原因かもしれない。このTrはAGCが全く効かない。(雑誌では2SC1815でもOKと書いてあったが。)データシートを見ればわかるが、何mAで動作しても同じ増幅率を維持している。
注意:トランジスタの増幅は入力電流に左右されます(電圧増幅度Av=(入力電圧Δv/入力抵抗hie)×hfe×負荷抵抗RL)ので、2SC1815でもAGCはかかります。ベースに流すバイアス電流を決定する抵抗値が2SC1815に最適化されていないのがうまくいかなかった原因なのかもしれません。
ダブルスーパー方式の短波ラジオを製作
一応鳴った。しかし、あまりにも音が小さいのでどの周波数を受信しているのかわからなかった。
VFOの製作で相当てこずった。
第2IFを生成する局部発振器(Lo)の製作に相当てこずった。
LC発振回路ではあまりにも周波数変動が大きいのでセラロックを使用した回路にした。
ミキサーには2SK439(2つ),IF増幅段に2SK241(4つ)を使用した。
->IF段にFETだけを使用したのが低い利得で甘んじていた理由だと思われる。
これは本やWeb上のトランシーバーの回路例を見るとFETばかりだったので、それをそのまま真似しただけだった。多分自作トランシーバーにつながっているアンテナは高感度で、かつロケーションもいい場所に違いない。
シングルスーパー方式の短波ラジオを製作。
基盤を剥き出しにした状態で、回路基板同士をリード線でつなげてラジオにした。
基板は、基本的に1枚あたりに1石のトランジスタ回路しかハンダ付けしない。
これは、どの部分の回路がおかしいのかすぐに特定できるようにするためと、間違った配線を直す時、他の回路の素子を熱でダメにさせないためにそうしたのである。
シングルスーパーにしたのは、以前作ったダブルスーパーのラジオで局部発振器の製作にものすごい時間をかけてしまったため、他の部分をおろそかにしてしまった反省から単純にした。
IF増幅にTrを使用したため、3石程度のIF増幅でも十分に聞こえたが、あまりにも不安定。周波数安定性が悪すぎる上に思っても見なかった周波数が受信できた。
なんとAMの受信機なのにTV放送の音声(FM)が受信できた。松田優作演じる工藤ちゃんの声が聞こえた。
(声は雑音がかなり混ざっている)
多分、VFOも剥き出しになっており、その中のポリバリコンがVFOの基板からかなり離れているのがまずかったのだろう。
またIF増幅は、最初のAMラジオと同様すぐに発振し、5pF程度の中和用コンデンサ(ベースとコレクタにつなげる)を入れてやっと発振をぎりぎりの線で抑えることが出来た。
以上の苦い経験から、今度は以下の様にした。
1.ラジオの各ブロックは金属ケースに収めて、ケースにBNC端子を付けて、金属ケースをBNCケーブルにつなげることでラジオになると言う構成にした(下の写真参照)。こうすれば思ってみない周波数を受信したり、発振も抑えられるだろう。もちろん、各ブロックを分けることで間違った配線を直す時でも配線の取り回しであまり苦労しないだろう。
2.IF増幅段はNFBをかけるようにした。NFBをかければ、発振の恐れを未然に防ぐことも出来、ノイズを小さくすることもできる。しかしこれは発振を完全に抑えて安定性を確保する理由の方が強い。(しかし、計画しているIF段の周波数より遙かに高い高周波回路では、NFBは位相が思った通りにならないためあまり使われていません。実際私がこのラジオを製作した場合も位相が思ったとおりにならなかったので頻繁に発振してしまい、かなり苦労しました。)
3.ミキサーはダブルバランストミキサー(DBM)にしてできるだけIF増幅段に余計な電波(VFOの発振周波数)をできるだけ混入させないようにした。単純なTrミキサーだとLOが発する電波ががそのままIF部に流れて、発振やノイズが起きる原因になる。
4.受信する放送はとりあえずラジオ短波(ラジオNIKKEIに変わるそうだ)の第2放送(9.595MHz)だけを考える。
これはVFOの製作に多大な時間がかかってしまうのを嫌ったためである。またラジオ短波の第2放送を選んだ理由は、市販のラジオで聴いても、受信状況は良くない時が多く、フェーディング(信号の強弱)も激しいので、この放送をまともに受信できればかなり満足できる性能だといえると思ったからです。この放送が聞こえた時点でVFOの部分を製作した方が結局は時間の短縮につながる。
ラジオたんぱ第2放送(9.595MHz)専用ラジオ全景
スーパーヘテロダイン方式ラジオのブロックダイアグラムそのものだ。
赤い線は電源で、右上の青い線(見難いが)がAGCだ。
(それにしても大掛かりなもんだ。)
配置は
RF増幅 ミキサ(DBM) IF増幅 検波+AF増幅+スピーカ-
VFO
となっている。
RF増幅の基板の一部分。
赤い線は電源。これはシングルライン(後述)で何度も手だけで抜き差しできる。トランジスタも同様
RF増幅の金属ケースの裏
同軸ケーブル使うべきだと思うが、単に普通の導線にシングルラインをはんだ付けしているだけである。
金属ケース内のRF増幅基板の裏。
ベタアース(すべてGND)がいいのはわかっているが、取り回しが難しいので、銅のシール(サンハヤトで\400程度,100円ショップダイソーでもテープとして売っている)を貼り付けてGNDにしている。
GNDは4隅にあるビスにも通じていて、単に金属ケースの上に載せる事で配線したことにしている(金属ケース全体をGNDにしている)。これも何度も試行錯誤するためにいちいちケースにビス止めする手間を省くためである。
何度も抜き差ししする可能性のあるものは、千石通商でシングルライン(左参照 \250前後)と言われているものをニッパで必要な分に切り取って基板にはんだ付けした後にトランジスタなどを指す。この方法を使えば何度もはんだ付けして試す必要がなくなり、素子や基板を痛めずに済むことができる。