中間周波増幅〜検波

IF増幅基板

黄色のIFT(中間周波トランス)の間に黄色い四角があるが、これはセラミックフィルタ(ムラタCFU455B)

上がAF増幅のLM386とスピーカー。下がIF増幅と検波回路

 

スピーカはテープで基板に止めていると言うひどいもの。音質もすこぶる悪い。AF増幅部の回路はほぼデータシートに記述されているとおりなのでここでは書きません。

IF増幅概要

中間周波増幅(IF増幅)はAGC制御できるトランジスタ2SC2670と2石NFB回路で増幅します。最後の2SK241はソースフォロワで、BNCケーブルに繋げるために必要なインピーダンス変換として使用しました。ですからその次のトランジスタまで距離が短いならソースフォロワは必要ありません。利得は全体で60dB以上はあります。(2SC2670で30dB, 2石NFB回路で約60dB。他セラミックフィルタやインピーダンスマッチングでいくらかの損失があります。)

インピーダンスマッチングについて

DBMからの出力に51Ωと18Ωの抵抗が並列につないでありますが(画面左上)、これはマッチング回路で、単純に入出力を50Ωにしているから51Ωを並列につなげればいいと思いますが、そうするとその先のトランジスタ回路の全体の入力インピーダンスが50Ωより結構下がるのであえて18Ωを入れました。18オームと言うのは適当です。CFU455Bの右側についている300Ωと51Ωも同じ理屈です(CFU455Bの入出力インピーダンスは300Ω。黄色のIFTの2次側のインピーダンスも300Ωなのでフィルタの入力側はCFU455Bとは直接つないでもOK)。ただし、ここでの51Ωはトランジスタの入力インピーダンスも含めてちゃんと計算に基づいて決定した値です。

AGCについて

IF増幅の2SC2670のAGC電圧はどの程度なのかわからなかったので、検波後の出力に色々な抵抗を加えて試したら2kΩが一番感度がよくなったので2kΩとしました(文字列「AGC OUT」の横にある抵抗)。本当はもっと値を上げると感度が良くなるのですが、ノイズも一緒に大きくなるので2kΩにしました。つまり実装技術で値の選定が違ってくると言うわけです。最初、音が鳴り始めたときは耳を澄ましてやっと聞こえる程度で、そのときに2kΩの抵抗を介してAGCをかけるとノイズが酷くてとても聞きづらかったのですが、10μFのパスコンを入れるとノイズがかなり取り除かれたので2kΩでも大丈夫になったのです。ノイズをできるだけ出さないように実装技術が向上すれば更に感度が良くなる値を設定できると言うことです。

セラミックフィルタについて

CFU455Bは村田製作所のセラミックフィルタで、短波放送受信にはちょっと帯域幅が広めです。夜になるとラジオたんぱ第2放送は海外の強力な放送局で埋没されてしまいます。無線機のSSBモード(高級BCLラジオでは同期検波回路と言われているもの)でやっと聞き取れるぐらい酷いものですから、当然と言えば当然なのですが。もっと狭帯域のフィルタを使用したかったのですが、アキバで出回っているジャンク品にはそのようなものはありませんでした。

(それに現在は全部1チップ化が進んでいるので、フィルタなどの個別部品を入手するのはだんだんと困難になってきています。おまけにアキバのパーツ屋はメーカーの処分品を売っている店がほとんどなので性能のいい製品をアキバで探すというのは意味がないのでしょう。性能の良いものはメーカの正規代理店に発注するしかありません)

IF増幅部の2石NFB回路について

この部分はかなり苦労した部分で、IF増幅は普通にシリーズで増幅するとすぐに発振するのでNFBにして安定性を図ったのですが、IFT(中間周波トランス)が入っているので、NFBでも発振してしまう時がありました。初期の頃は2SK241の部分にもIFTを入れたのですが、発振してしまい上の様になりました。また、2SC1815BLのコレクタにに繋がっているIFTは、通常次の回路に信号を渡す時は2次側の端子を使用しますが、上の回路を見てもわかるように1次側から直接次の回路に渡しています。これも発振してしまうために2次側は使用しないのです。断定できませんが、IFTの1次側と2次側では位相が反転(180度変化)しているとしか考えられません。反転と行かないまでも、相当位相が変わっているのは確かだと思います。2SK241側にIFTを入れたら発振したと言うのもIFTで位相が相当変化しているのではと思っています。

2SC1815BLに繋げられたIFTの1次側を使うので2SK241に入ってくる信号のインピーダンスは理論上は無限大です(IFTの共振回路からの出力からなので)。そのために高インピーダンスの信号にに比較的適合性が高いFETを使うことになります。またFETはバイアス電流は基本的に必要ないので、単に電位を一定に保つためにバイアス回路を入れてあります。2SK241の前にある300Ωは。入力インピーダンスを高めるために入れてある抵抗です。値は経験値で理屈では決定していません。

(トランジスタではこのような設計は常にいくらかのベース電流が必要なために自由な値を設定できません。その点においてもFETを選択する理由でもあります)

もっと高い値を設定すればマッチングが良くなり出力が増大しますが、そうすると今度はNFB全体が発振してしまいます。高インピーダンスの信号は信号が別の回路に入り込み発振をさせる要因となりますので、できるだけ低インピーダンスにした方がいいのですが、上記の諸々の理由により2SC1815BLのコレクタに繋がったIFTの1次側の信号を引き回さざるを得ません。

検波回路の前段にある黒のIFT

これは検波回路の後に繋がっている低周波(AF)増幅ICであるLM386の入力インピーダンス(50kΩ)にあわせるためのものです。確かこのIFTの2次側のインピーダンスは12kΩだと思います。

検波回路について

これは「ビギナーのためのトランシーバー製作入門 AM SSB編」からヒントを得たものです。この本でも4本のダイオードを使用して検波していますがダイオードの向きが違います。この本ではダイオードの向きがDBMのそれと同一です。多分DBMからヒントを得たのではと思いますが、実際にこの向きで検波すると信号が小さくなりました。本では感度が良くなると書いてあるので何度も試したのですが。信号をオシロスコープで見ると単に安物のAMラジオで使われている1本のダイオードで検波した時と同じでした。信号の通り道を考えていると当然と言えば当然ですが...そこで電源回路の事を思い出しました。よく見ると、電源回路の整流回路はダイオードは同じく4本使っているが、この本とはダイオードの向きは違います。つまり電源回路で使われる全波整流回路を上の回路で使用しているのです。これは明らかに感度が上がりました。マイナス側の信号も取り出しているので、再現性が高いのです。ちなみにダイオード1本だけの検波は半波整流となります。(上の回路上ではマイナスのAGC電圧を得るために下の図で言うと、整流後の波形は下半分の部分に波形が出力されます。)

人間の耳に聞こえるAF信号はダイオードで上半分(または下半分)にした後、コンデンサで「ならして」、下の図で言うと赤い部分を取り出したものになります(実際はカーブの山から次の山まで若干右下がりのラインになる)。つまり下の図の場合は受信しても無音状態(何の変調もかけていない)で、音声信号があるとこのサインカーブが上下に変化して音声信号として人間の耳に聞こえます。

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