RF増幅

NFBを利用して高い利得と低ノイズを狙いました。(ノイズについては測定はしていないので本当に効果はあるのか不明)アンテナに入ってくる最初のFET(2SK241)は800オームに合わせるようFCZコイル2つを使用して変換しています。2SK241は800Ωの時にNF(ノイズフィギュア)が最低になるといわれています。(「高周波回路の設計・製作」 CQ出版P.39)。FCZコイルを2個使用したのは、単にコイルを自作で作りたくなかったためと、FCZコイルのちょうど一次側コイルの中点に電源を注入するタップがあり、それをアンテナの入力として利用すると、以下の公式により、50Ωは200Ωになり、もう1度同じコイルで変換すると200Ωが800Ωに変わるのを利用したためです。普通はコイル1つで50Ωから800Ωに変換するでしょうが、筆者は面倒くさがりなのでFCZコイルで代用しました。

変換公式は左図のとおり。

要するに最初のFCZコイルのインピーダンス変換では、SQRT(200/50) = 2回/1回 (中点にタップがあるので何回コイルが巻かれてようが、2:1の比率になる)

次のインピーダンス変換では、SQRT(800/200)= 2回/1回となります。

FCZは 9MHz用を使用しましたが、この公式から考えれば、50MHz用だろうが144MHz用だろうが関係ないことになります。(実際は何らか影響があると思っているが)この左図にあるインピーダンス変換は式を見ればわかりますが、周波数特性をもっていません。どの周波数でも同じ結果になります。したがって、この部分は別の周波数を受信する際でも全く変更がいらないと言うことになります。

インピーダンス変換の次は、2SK241を2石使用したNFBアンプです。これは、「定本 トランジスタ回路の設計」 (CQ出版社)で紹介してあるNFB回路を応用したもので、並直列帰還または電圧比帰還と呼ばれているタイプの負帰還回路です。このNFBの増幅率はおよそ(Rf+Re)/Reであり、回路図を見て計算すると約30倍≒30dB増幅します。Tr1のドレインはFCZ9と51pFで並列共振回路を構成して、ラジオ短波の第2放送の9.595MHz付近だけを増幅するようにしています。これにより他の周波数帯は増幅しないので、ノイズを少なくすることが出来ます。もちろんこの9.595MHz付近の電波しか受信できないラジオになりますが、実際はそんなに急峻な特性ではないので、結構いろんな局を受信できます。もし、このTr1のドレイン部分の共振回路の定数を可変できる仕組みがあるなら、あらゆる周波数帯においてノイズが少なく、混変調特性に優れた回路になります。(例えば、T3のFCZ9の1次側につながっている51pFを可変容量ダイオード(バリキャップ)にして、バリキャップにかける電圧をボリュームなどで可変するなど)

Reは10Ωを3本並列つなげてありますが、これは単に10Ωより小さな値の抵抗が手元になかったからそうしたまでです。10Ω並列につなげると1/(1/10+1/10+1/10)で約3.33Ωになります。

Tr1の2SK241のドレインにつながっているFCZ9コイルは2次側を全く利用していません。もし2次側を利用すると、位相が反転しないために、次のTrのドレイン側はアンテナ入力と位相が同じになり、帰還抵抗(Rf)をエミッタに注入すればNFBにならずに正帰還つまり.発振回路になります。もちろん、その場合Tr1のゲートにRfを注入すればNFBとなりますが、入力インピーダンスが変わりますし、増幅率がわかりません。(本に載っていない)また、Tr2のドレインにもFCZ9を入れればTr1,Tr2のFCZコイルの2次側を出力可能になり、帰還抵抗(Rf)を上記の回路通り、Tr1のエミッタにつなげることが出来ますが、455KHzIF増幅でのテストではなぜか発振してしまいました。(コイルが入ると純粋な抵抗に比べて想定したとおりでなく位相がかなりずれてしまうのかもしれません。)

したがって、Tr2のゲートはTr1のドレイン--非常にインピーダンスの高い信号--を受けることになります。理論上Tr1のドレインのインピーダンスは無限大になります。この場合FETの特性が活きてきます。特にMOS-FETならゲートには電流が流れないので、バイアス抵抗を非常に高くすることができ、入力インピーダンスを高めることが出来ます。本当ならMOS-FETである2SK241なら多分ゲートに並列に高抵抗(上の回路で言うTr3の左にあるR3だけをGNDとTr2のゲートにつなげる)をつなげるだけでOKだと思いますが、上の回路図ではバイポーラトランジスタでも動作するようにバイアス抵抗を付けています。R3はTr1のドレイン側から見たTr2の入力インピーダンスを高くする抵抗で、値はカットアンドトライで設定しました。この抵抗が高ければ高いほどインピーダンスマッチングが良くなり増幅度は上がりますが、あまりにも高くすると、NFBなのに何も信号を注入しなくても発振するため(インピーダンスが高くなると信号が空中を伝って別の回路に紛れ込む可能性が高くなる)、むやみに高くすることは出来ません。高周波回路では高インピーダンス部分(この場合高抵抗を使うこと)はできるだけ作らない方がいいのですが、前述のNFBの問題でTr1のドレイン部分を長く引き回す結果となりました。インピーダンスの高い部分はできるだけ回路長を短くする必要があります。

Tr3のバイアス抵抗(560Ω×2)は、前段のNFBの出力インピーダンスが実測でおよそ560/2=280Ωになっていることからそうしただけです。560Ωはバイアス抵抗としては低い値なので電気を食います。ですから、このよう回路はしない方がいいと、後で思いました。(あとでインピーダンスを50Ωにしなくては行けないと気づいて、急遽ソースフォロワを付けたためこんな回路になってしまった。)Tr3がMOS-FETだけを想定している回路なら、Tr3のゲートに300Ωの抵抗のみをカップリングコンデンサとNFBループ間に並列につなげればNFBの出力インピーダンスとのマッチングは済むと思います(実際にはテストしていない)。

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