むちゃもん 山口組・田岡一雄三代目に杯を返した元直系組長の回想録 amazon.co.jp
元ヤクザ(元山口組直系・山次組組長 山本次郎)が山口組に解散しろと言っている。そうこの本のオビに書かれてあり、店頭で手に取ってぱらっと読んだが面白そうだったので購入した。
オビの全文は
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(表)
伝説の人斬りヤクザ、金権体質に堕した山口組に解散迫る!
田岡三代目に『原子爆弾』と呼ばれ、
立った16年で自ら堅気の道を選んだ、
神戸の無茶者(むちゃもん)「殺しの次郎」の壮絶自叙伝。
山口組解散建白書公開!
解説・溝口敦
(裏)
暴行、傷害、殺しで犯歴36犯。
山口組三代目・田岡一雄をして、
「原子爆弾」といわしめる無茶者がいた。
人呼んで「殺しの次郎」。
神戸最強の喧嘩請負人は、
カネに汚れたヤクザの実態を見抜き、
最愛のオカンに報いるため、
途方も無い発想と無尽蔵な馬力で、
堅気への道を疾走する----。
山口組正史を射抜く異色の自叙伝!
善と悪の彼岸を見つめる人間ドラマ!!
—-
ヤクザに厳しい溝口敦氏が解説でこの人をさん付けで好意的に解説している。これもこの本の購買意欲をかきたてた。
溝口敦氏が、この本の著者山本氏は広義の任侠道を実践しているとまで述べている。
この本で出てくる人は、よく知られている山口組のヤクザばかりだが、福田赳夫元首相まで出てくる。
三代目田岡一雄もそうだが、年上の人に対しても物事を率直に言う山本氏に対して好意的に思っていたのだろう。
戦前、彼が学校に通っていたとき差別が酷くて、それに対してケンカばかりしていたといい、ケンカが強くて貧困から極道の世界に徐々に入り込んでいく話は、ジャーナリストがヤクザを取材した記事とは比べ物にならないほど生々しく、当時の経済状況とヤクザの係わり合いがよくわかる。
こう書くと、読んでてつらくなるかもしれないと思うかもしれないが、山本氏のキャラクターが漫画の主人公のようなのでエンターテイメントとしても読めてしまう面白さがある。侍ジャイアンツの番場蛮とかサラリーマン金太郎とか(もしかしたらサラリーマン金太郎はこの人をモデルにしたのかもしれない)思い出してしまった。
侍ジャイアンツを知っているなら、番場蛮が気に入らない巨人軍に入団して内部からブチ破ってやろうと言う思いが、山本氏の山口組に入るいきさつや、現在の山口組に対する思いに似ており、サラリーマン金太郎を知っているなら、勉強は出来たのだがグレてしまい、その後、大会社の社長や首相に気に入られる所が似ていると思うかもしれない。ちなみに侍ジャイアンツの主人公は高知出身のようで(エンディング曲で「土佐っぽだい」と言っている)、山本氏は神戸出身だが、両親は徳島出身で気質が似ているかもしれない。
この本が単なる元ヤクザの回想録と言えないのは、三代目田岡組長やその他の有名な山口組幹部との絡みが記述されているだけではなく、現代でも懸案事項である政治経済問題が記述されているからだ。
9章の「ヤクザが国に物申す」という部分では、山本氏が食管法の不備(闇米を食わないと事実上生活できない)を、あえて大っぴらに法律違反して逮捕してもらうというやり方で国に文句を付けに行ったことを記述している。P.159に国の欺瞞を端的に指摘している。その部分を以下に抜粋
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もしおれを食管法違反で逮捕し、犯罪者として処分したのなら何も言わない。しかし国はヤクザのおれが起こした犯罪をなかったことにしてくれと、おがみ込んできたのだ。国が犯人隠避罪を犯したわけだ。政治家も官僚も共謀共同正犯だ。
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巻末の年表を見るとこれを行ったのは昭和41年(1966年)だ。
10章の「福田赳夫を狸で化かす」では、福田元首相は
「消費経済を続けていたら、国債乱発で国の借金が膨れ上がるだけだ。でも、いくら説明しても誰もわからんのだよ」P.167
「山本くん、ぼくはもう総理はやめたよ。300億かかるんだ。勝とうとすれば」P.168(田中角栄が推す大平正芳氏との総裁選で)
と話していたという。山本氏は福田元首相とは正反対の考えで福田氏の政敵である田中角栄に当時本気で殺意を覚え、殺しておくべきだったと述べている(笑)。
山本氏はオカン(母親)に救われて堅気になったと述べているが、彼の息子夫婦は山本氏の財産を目当にしており堕落してしまったから破門(縁切り)したという。なんとも皮肉な結果か。
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