GXP1160:FUSION IP-Phone SMARTでビジネスフォンを家庭用固定電話として使う
FUSION IP-Phone SMARTはスマートフォンで使う格安通話サービスだが、このサービスは汎用的なSIP(Session Initiation Protocol)を使ったサービスであり、専用アプリケーションが無くてもSIP機能の付いた端末なら何でも使える。PCでも電話アプリがあれば使えるし、SIP電話機と言われているものでも使える。
SIP電話機は、現状ビジネス向けの電話機であり、家庭で使う事を想定していないが、FUSION IP-Phone SMARTの登場で、個人でも購入して使用できるようになってしまった。
このフュージョンの制約のない自由なサービスは、真のIP電話機がメジャーになるきっかけになるのではないのかと思っている。Webメール同様、電話番号はそのままで端末やISPは自由に選べるのだ。今までのIP電話機はプロバイダに縛られているから、そのプロバイダを解約すると使っている電話番号も使えなくなる。フレッツ光のひかり電話もIP電話の一つだが、この電話サービスも全く同じだ。
私は迷惑電話一つかかってきても気分を害してしまう人間であり、完全にそのような電話はシャットアウトしたいと思っているのだが、これから引くフレッツ光のひかり電話だとどうしても高く付くのだ。通信料は最初の2年間は現在のADSL+加入電話より安くなるが、それ以降になると微妙に高くなる。基本的にIP電話サービスでは無料であるはずのナンバーディスプレイに加入したら明らかに高くなる。
だからこの際、加入電話とはおさらばしてFUSION IP-Phone SMARTと今回買ったSIP電話機で固定電話の代わりにすることにした。これなら通話料が8.4円/30秒とひかり電話より高くても、基本使用料無料なので、ろくに使わない人間だと安上がりに済む。ひかり電話の基本使用料は現在月額525円で、これはFUSION IP-Phone SMARTでは約30分の通話料に相当する。私は月合計30分は喋らないし、頻繁に電話もかけない。
GrandStream GXP1160ははっきり言って外観で選んだ。他のSIP電話機は個人使用でははっきり言って、でかすぎ、ダサ過ぎ、大げさすぎだ。(シスコの電話機は1970年代の古めかしいデザインだね)
PanasonicのUT123nは比較的家庭にマッチしたものに見えたが、着信拒否機能が家庭用電話機と大して変わらないのでパスした。着信拒否番号にワイルドカードが使用できないのだ。
このワイルドカードが使える電話機は筆者が調べた限り、家庭用電話機には無い。最近の迷惑電話は電話番号がまちまちであり、着信拒否番号を登録しても登録上限数が少なすぎて対応しきれないし、また、いちいち登録するのも面倒だ。
幸い迷惑電話は0120か03の番号でかかってくるのがほとんどであり、この番号が最初に付く電話番号をシャットアウトする設定ができればいいのだ。そのためにはワイルドカードが必須なのだ。
GXP1160はワイルドカード機能があるが、着信拒否番号登録はない(非通知着信拒否はある)。しかし、このワイルドカード機能は着信鳴り分け機能の時に使うため、実質着信拒否に使える。なぜならいわゆる着メロがこの電話には設定できるからだ。つまり、迷惑電話の時は無音にしてしまえばいいのだ。
幸いこの電話機は着信時、光が点灯しない。液晶にはバックライトが付いておらず、見づらい欠点であるが、迷惑電話を関知しない点においては逆にいい。
時たま、0120でかかってくる電話でも本当に必要な連絡の時があるが、このときはFUSION IP-Phone SMARTの方で留守録が出来るため(このサービスは追加料金なしだ)、大事な電話を取り逃すことはない。
この留守録が電話サービス側にあるのは極めて大きなメリットであり、固定電話でも無料でサービスすべきものだろう。電話を付けっぱなしにする必要性が無くなるからだ。
セットアップ方法
さて、実際の設定は基本的にネットワーク機器なので設定項目が多く、初心者向けではないが、FUSION IP-Phone SMARTのアカウント情報を登録できてしまえば、とりあえず使用できる。
GXP1160は、家庭用アナログ電話機にVoIPアダプタをかまして使う必要のない本物のIP電話機であるので、通信ケーブルはLANケーブルでルータとつなぐ。現在みなさんが使っている無線LANルータに繋げても問題ない。姉妹品のGXP1165だと電源がLANケーブルを介してルーターやハブの電源を使うので(PoE機能)、LANケーブル一本だけで済む。他のSIP電話機はたいがいPoEが標準的な使用と想定しているのでACアダプタが別売りの商品があるが、GXP1160は標準でACアダプタが付いている。(その代わりPoE機能はない)
LANケーブルをつないだら、ACアダプタをコンセントとGXP1160につないで電話機を起動する。起動時間は非常に長く2分以上かかる。
起動後、GXP1160の左上にあるソフトボタンを押すとGXP1160に割り当てられたIPアドレスが表示されるので、それを使って、Webブラウザ上から各種設定を行う。IPアドレスが例えば192.168.0.2なら
Webブラウザのアドレス上でhttp://192.168.0.2(リターン)
と入力する。パスワードは初期設定でadminだ。
日本語表示可能だが、それは項目のみで説明は英語である。
上のプルダウンメニューからAccounts -> アカウント1-> General Settingsを選択
SIPサーバ名、SIPユーザID,認証ID、認証パスワードを入れる。
SIPユーザID,認証IDはFUSION IP-Phone SMARTのSIPアカウントを入れる
(多分どちらか一方だけの入力で良いかもしれない)
「アカウント名」はGXP1160で表示される文字列であり、私は割り当てられた電話番号を入れた。
最後にSave And Applyボタンを押す。直ちにGXP1160にその情報が送られて設定が変更される。
プルダウンメニューのStatusをクリックして、右側にある「SIP登録」が緑の背景でYESとなっていれば登録はうまくいっており、電話として機能するはずだ。
音声コーデックの変更と通話品質
ただ、これだと通話品質が非常に悪い。音声コーデック(Vocoderとも言われている)がiLBCというものが選択されてしまうからだ。GXP1160の音声コーデックを選ぶ設定項目は、複数あるがどのような順番で登録しても、帯域幅の狭いプロトコルを選んでしまう。したがって、日本やアメリカで標準的なPCMU(FUSION IP-Phone SMARTではG.711と記載)になるようにする。音質が良いと言われているG.722でも良いが、違いを見いだせなかった。
上のプルダウンメニューからAccounts -> アカウント1-> Audio Settingsを選択
以下設定例(PCMUだけ選んでいればまず問題ない)
友人に手伝ってもらって通話品質のテストしたが、携帯電話回線(ドコモ)は若干遅延が発生して話しづらかった。また友人がたまたまFUSION IP-Phone SMARTに加入していたので、無料通話も行ったが、これが酷すぎて使い物にならなかった。せっかくの無料通話が台無しだ。ただ、ドコモの携帯ネットワークを使った通話であり、固定インターネット回線は違うかもしれない。こちらはADSLで下り1Mbytes/sec、上り110Kbytes/sec程度の性能
一方一般加入電話との会話は遅延も感じられず全く問題なかった。非常にクリアである。固定電話回線との通話なら多分ほとんどの場合問題ないと思われる。
肝心の着信鳴り分け機能の仕方は、かなり面倒で相当手こずったので別ページに書くことにした。
とりあえず、うまく行ったことだけは言える。
その他の機能
日本語表示
Web設定だけでなく、GXP1160の液晶画面でも日本語表示可能。日本語への変更はGXP1160側でやらないとうまく行かないようだ。(「ッドホ」とはヘッドセット選択)
電話帳に記載できる文字も日本語可能。日本語で登録できる電話帳の文字数は姓名各3文字に限定される。
天気表示
何もしないと左上のソフトキーを押すと東京の天気が表示される。
自分の住んでいる所を表示したい場合は
設定->Web Serviceで
都市コードにSelf-Defined City Codeを選択し、
その下にそのSelf-Defined City Codeを記載する。
このコードの取得方法はhttp://www.weather.com/にアクセスし
トップページ左上のWeatherからLocalを選択する。
http://www.weather.com/weather/today/JAXX0061:1
(自宅の場合)
と表示されるが、JAXX0061の部分がCity Codeだ。住んでいる地域によってこの部分は変化する。
日本の場合、JAXX0001からJAXX0117まであるようだ。
時刻設定
そのままでも勝手にやってしまうが、ntpサーバーは近くにある日本のものにしておこう
設定-> Date and Time から
ntp.jst.mfeed.ad.jp
などを設定
追記(2014 4/16):その他気づいたこと
1.この電話機で発信すると、着信先が企業の場合、事前に電話帳に登録していなくても組織名を日本語で表示してくるときがある。無論、相手先が登録していればの話だが。これは推測なのだがFAXで自局名を設定する項目があるのでそれを拾っているのかもしれない。
2.デフォルトの着信音が低い「ブー、ブー」と言う音なので、日本製のデフォルトの着信音とは違い、びっくりするようなことが無い。携帯電話のバイブレーション機能が働いているような控えめな音だ。音量は調節できる。
3.受話器から出る音量を調節できる。最近の加入電話機は不明だが、これが出来る加入電話機を私は知らない。よくお年寄りから声が小さいと言われるのだが(私が受話器と口との間を空けてしゃべっているのが原因)、耳が遠い人には重宝するだろう。
最後に
当初の目的は達成できたので良かったのだが、Fusion IP-Phone SMartは0120には通話できないのが最大の問題点だ。0120着信拒絶しても発信は必要なのだ。直接要望を出したのだが早急に対応してもらいたい。これは課金されても構わない。0120に発信出来ると出来ないでは大違いである。
以下はGXP1160の上位版。アカウントを2つ設定できる。Fusion IP-Phone SMartでショッピングやサービス登録時に使用する電話番号として、流出を想定した留守電専用の番号を新たに登録して、業者との会話時にその番号で発信する時には良いかもしれない。ただし、2つのアカウント両方で常時着信可能だと、業者側に登録した番号に迷惑電話がじゃんじゃんかかって意味がないかもしれない。
PanasonicのSIP電話機
以下の2つはワイルドカードによる着信番号拒否が出来るSIP電話機である