サイト内検索

カテゴリー

最近のレビュー

リンク

なつはぜ広告について

このサイトは投稿者が勝手にレビューしているアフィリエイトサイトです。不定期に更新しています。

個人情報の取り扱いについてはここをクリックしてください

夏目睦「傷はぜったい消毒するな」:食品用ラップで酷いケガをきれいに治す方法を紹介

傷はぜったい消毒するな amazon.co.jp

著者は形成外科医で、従来のケガの治療方法に疑問を持ち、自らの体を実験台として従来の治療方法と新しく発見した食品用ラップを使用する治療方法(湿潤治療)との違いを検証して、食品用ラップを使用した治療方法の有効性を確かめ、その方法を患者に適用して従来の治療方法よりより早くきれいに治してしまうことを実証した人物である。
食品ラップを使用した方法は、1日のうちに何度が取替え、ワセリンを塗ったラップをかぶせる(これにより傷で痛まずに済む)。また専用のプラスモイストという治療材料を使えば更に効果的だという。以下参照

湿潤治療は、早くきれいに治り、かつ消毒薬を使わないから患者が痛がることも無い。痛がらないという事は患部周辺を自由動かせることになるので、例えば酷いやけどを負った場合、従来の治療だと体が痛くて動かせないため、入院が必要となり更に食事が取れず点滴が必要となるが、それらも防げる。

(先日仮面ライダー2号を演じた俳優がテレビに出ていたが、彼はストーブの消し忘れで火事になり、その際大やけどを負って見た目が悪くなり俳優業を断念したと言っていたが、湿潤療法を使っていればやけどのあとが目立たないから俳優業も断念することもなかったかもしれない。と言っても現在の彼は当時とはかけ離れた寺の和尚のような風体になってしまっているのだが。火事の原因になった酒の飲み過ぎは体にも悪いし、人生も狂わせる)

少々大きな外傷でも個人で治療できるようになるが、どんな傷でも病院に行かなくてもいい訳ではない。傷の範囲が広く、皮膚が欠損しているときや、虫や動物に噛まれて腫れていたり、患部に砂や泥などの異物が混じって汚染されていたり、発熱している場合などは病院に行くようにと述べている。

この本は著者の研修時代の疑問から湿潤治療を編み出し、更に発展して単細胞生物の進化(著者の推論)を皮膚という観点から述べている。旧態依然とした外傷治療を行われている現状から、医学が昔から今でも「パラダイム」(科学上の問題を取り扱う前提となるべき、時代に共通の思考の枠組。広辞苑より)にとらわれており、それが医学の発展を阻害し、パラダイムシフトが起こったときに発展することを過去の例を元に紹介している。

パラダイムは基本的にその時代の体制派の理論的支柱になっており、それを突き崩す現象を世に大きく知らしめる人物は、ほとんどの場合、非難されて憂き目に遭う。有名な例は、最近になって公式謝罪したが、ガリレオ・ガリレイが地動説を唱え、天動説しか認めない当時のカトリック教会が彼を宗教裁判にかけた歴史がある。

本書では、その例をいくつか取り上げているが、ここでは一つだけ紹介する。
P.88に書かれた産褥熱(出産後の母親を襲う正体不明の熱病)の防止方法について(特に病院での発生割合が高かったという)、ゼンメルワイスが考案した方法が、当時の学会や医学会で大きく反発された。自ら発見した効果的方法を発表したおかげで、彼は大学を追い出され産科学会に無視をされ47歳で亡くなったという。今では当たり前の方法(石鹸や塩素水で手を消毒することなど)を実践しただけなのだ。つまり、この方法を実践して効果を上げてしまうと、これまでの方法を否定することになり、体制側のお偉いさんの顔に泥を塗ってしまうということになるから反対されたのだ。
手の消毒など現代人では常識なのだが当時は何もせず素手で作業をしていたのだ。

この状況は今でも基本的に変わっていない。これは本書の著者も同じ見解であり、著者の一番述べたい主張だ。

本書は湿潤療法で得た知識を元に、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、手あれを治せることを紹介したり、(要するに白色ワセリンをたっぷり塗りこんで皮膚の乾燥を防ぐこと。こちらは怪我と違ってかゆみを抑える)、化粧が肌の老化を促進させるとか、MRSAの問題、常在菌の必要性などを述べている。

著者は徐々に医学書ではなく数学や生物学の本を読むようになったというから、医学というのは、関係者の精神性も低い状況だと前から思っているが、医学そのものも遅れているようであり、よほどの事が無い限り病院には近づかない方がいいと更に思うようになってしまった。
病院に行く際はこちらもかなりの知識で武装していないと治る病気も治らないままにされてしまうだろう。

また、著者が述べているように専門家の方が素人より遅れているというのは残念ながら良く思うことだ。特に勤め人だと視野が狭くなるのは私自身、身ををもって経験している。圧倒的に優れた手法は大きな組織にとって利益相反となるので、見て見ない振りをするか、弾圧を加えてしまうのである。だから組織内の人間は集団催眠にかけられた状態になってしまっている。